2018年1月1日月曜日

201 ガン告知

(一)尿が出ない
9月になっても暑い日が続いていた朝、突然尿が出なくなった。2010年の夏は異常に暑く、室内でも熱中症にかかる人がいて、はじめは私自身も、てっきり熱中症にやられたと思った。しかし尿の出ないその苦しさは熱中症とは違うようだ。医者嫌いの私でも我慢ができなかった。家内のアドバイスで近所の泌尿器科の病院に駆け込んだ。
病院は混んでいてなかなか順番が来ない。苦しみながらの二時間を経て、やっと診察。尿道閉塞ですぐにカテーテルを膀胱に入れて尿を出すことができた。出た尿は600ccで、通常、膀胱に溜まる量の二倍に相当した。
頻尿、残尿感、尿切れが悪い状況は以前からあった。しかし痩せてきたとか、体調が悪いとかいう前兆はまったく無かった。

(二)検査、検査で、日が過ぎていく
二週間後、超音波で前立腺を調べると、前立腺が普通の三倍近くになっていることがわかった。これが膀胱を圧迫して、尿道閉塞や、頻尿、残尿感、尿切れが悪いことの直接の原因となっていた。
前立腺が膨張している原因としては、前立腺肥大や、前立腺ガンが考えられるので、念のためPSA(前立腺特異抗原)を検査することになった。
医者はこの段階では深刻な病気が隠されているとは考えていなかったようだ。医者からは、「前立腺患者に出す二種類の薬を処方しますから一ヶ月様子を見ましょう、一ヶ月後に来てください」 と軽く言われた。

一カ月後
10月20日、PSA(前立腺特異抗原)の数値が721と判明した。医者が相当あわてているように感じられた。
(401PSA(前立腺特異抗原)の判断基準参照)
PSAは、前立腺ガンの有無を判定する基準として使われている。年齢にもよるが、正常の人では、PSAの正常値はおおむね4以下だとされる。そこから考えると、721という数値はとてつもなく高い。
医者は、「炎症を起こしている場合でも数値が高くなることがあるが、数値から見てガンの可能性が高いとみられます。精密検査をしましょう」 といった。医者の「ガンの可能性」というこの言葉を聞いて、ガンに罹患したことを覚悟した。

(三)家族に話すのがつらい
気持ちが動転する中で家内に話さなければならない。事実を話して、精密検査まちだと話す以外なかった。家内が落ち着いて対応してくれたのが救いだった。
兄弟、子供たちには、二回目のPSA検査の数値が786とでて、一回目より数値が悪化しているのを見て医者から「ガンに間違いないでしょう」といわれてから連絡した。電話では話しづらいのでメールでつぎのように連絡した。
「九月はじめ尿道閉塞となり、検査の結果、前立腺が普通の人の三倍になっていました。PSAの検査をしたところ721という異常に高い値が検出されました。再検査でも786と一段と悪い結果が出ました。
医者の意見では、私の数値が極めて高く、前立腺ガンと診断されました」(10月29日)。

これに対して兄からの返信は
「前立腺のやまいは男性にとって、ほとんど必ずもたらされるものです。 そして、胃のやまいと同様に、治療のもっともしやすいもので、完治も可能です。気持ちをしっかりとおもちください。
私のまわりには、前立腺がん手術の経験者がたくさんおいでです。
他の病の起らぬように、気をつけてください、気持ちによって体の調子は変わりますから、気持ちをしっかりとしてください。
橋本豪『ガンを自分で治した医師の「ガン治し」本気塾』ビタミン文庫、マキノ出版
参考になるかとおもいます。発送します」
励ましと勇気が出るメールだった。あとでもう一度触れるが、この本は文字通り人生を変えた一冊となった。

次男からのメールは
「父さんへ返信遅くなってごめんなさい。正直、ショックでなんて返していいのか、
こんなに近くにいるのにどんな顔をして会えばいいのかもわかりませんでした。
非常に進行の遅いタイプだと聞いたのでちょっと気が楽になりました。
うーん何書いていいのか、わからんですwwww
またビールをくすねにいきます!ではでは」
この次男からのメールは、だいぶ困惑している様子がうかがえる。

長男からのメール
「ご連絡ありがとうございます。まずは、検査、お疲れさまでした。けっこう大変だったのではないでしょうか。前立腺がんは男性の罹患率が高い病気ですね。
ガンの中では、比較的完治率が高いと記憶しています。
私の知人でも2~3人いたと思います。とりあえず、結果を待って、その後のことを考えましょう」
冷静に対応してくれているようだ。

検査に話を戻す。
10月26日
検査入院。前立腺の細胞組織を、直接、採取針で採取してガン細胞の有無を確認する「生検」という検査で、私の場合は8本採取した。

11月9日
千葉駅にある井上記念病院でガンの転移を調べるCTと骨シンチグラフィーの検査をおこなう。
骨シンチグラフィーというのは、骨にできたガンを調べる検査である。特殊な放射線物質を注射して、三時間後にガンマカメラで撮影すると、ガンができた骨の部分が黒く映し出され、前立腺ガンの特徴である、骨への転移を発見できる。

この骨シンチグラフィーでは、大変苦しんだ。午前中に注射を打ち、「注射後水分を取って、撮影直前に排尿してください」との指示に従って水を飲んだが、思ったほど排尿ができない。撮影直前にもトイレに行ったが、思うように排尿ができない。
撮影が始まったら体はバンドが掛けられ、身動きができなくなった。とたんに膀胱に尿が溜まりだした。このごろは尿意があると我慢ができなくなるので注意深く対応したつもりであったがうまくいかなかった。医者が、あと30分です、あと20分です、あと10分ですと経過をいってくれる。この声を聞きながら、脂汗を流し時間の経過を祈るようにまった。終わってトイレに駆け込んだとき、よく我慢できたと思う。途中で我慢ができず、漏らしてしまうのではないかという恐怖に何回も襲われた。

(四)身体がどんどん蝕まれていく感じ
検査を受けている間に、身体のいろいろな個所に変調が見られるようになった。
10月中ごろ一日のトイレに行く回数が20回を越えてきた。就眠中のトイレの回数は5から6回、多いときで7回、自分でもいつ寝ているのかと不思議に思うほど頻繁であった。
このころは尿意をもよおすと切迫感があり、我慢ができなくなってきた。外出するときは、必ずトイレの場所を確認してからでないと不安で出かけられない。自動車も、途中のトイレが心配で、乗るのを控えるようになってしまった。

11月7日
右鎖骨、右足股関節が痛みだした。歩くのが不自由になり、家内の肩につかまって駐車場までの50メートルもやっとの思いで歩く状況になってしまった。
(425痛みの本質参照)
体重は55キログラムと、今まで維持してきた体重より4キログラムも減ってしまった。身体のあちらこちらが蝕まれ、どんどん悪くなっていくのを感じながら、不安との戦いの毎日であった。

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